Hebreus 10

Japanese Raguet-yaku ラゲ訳「我主イエズスキリストの新約聖書」(1910年版) (JAPRAGUET)

1 抑律法は、将來の恵の影のみを有して、事物の眞の像を有せざるが故に、毎年絶えず同じ犠牲を献げて、祭壇に近づく人々を完全ならしむる事は、決して能はざるなり。

2 然らずんば、祭る人々一旦潔められては、復罪の意識なかるべければ、祭を献ぐる事止むべかりしなり。

3 然れど彼祭に於て年々罪を紀念するは、

4 牡牛と牡山羊との血を以てしては罪を除く事能はざるが故なり。

5 然ればキリスト世に入り給ひし時曰ひけるは、「主よ、犠牲と献物とを否みて肉體を我に備へ給へり、

6 燔祭と罪祭とは御心に適はざりしを以て、

7 我言へらく、看給へ、巻物の初に我に就きて録したれば、神よ、我は御旨を行はん為に來れり」、と。

8 然て初には、「主よ、犠牲と献物と燔祭と罪祭とを否み給ひて、律法に從ひて献げらるるものは御意に適はざりき」、と曰ひて、

9 後には「神よ、看給へ、我は御旨を行はん為に來れり」、と曰へば、是初の事を廃して其次の事を立て給ふなり、

10 此御旨の故にこそ、イエズス、キリストの御體が一度献げられしに由りて、我等は聖と為られしなれ。

11 然て司祭は、総て日々に立ちて聖役を行ひ、何時も罪を除く能はざる同じ犠牲を献ぐれども、

12 此大司祭は罪の為に一の犠牲を献げ給て、限なく神の御右に坐し、

13 斯て敵の己が足台と為られん事を待ち給ふなり。

14 其は聖と為られたる人々を、一の献物を以て限なく全うし給ひたればなり、

15 聖霊も亦之を我等に證し給ふ。蓋前には、

16 「主曰はく、彼日の後我が立てんとする約は斯なり、我律法を彼等の心に與へ、之を其精神に録さん」、と曰ひて後、

17 「我最早彼等の罪と不義とを記憶せざるべし」、と曰ひしなり。

18 是等の赦ありたる上は、罪の為の献物は絶えて之ある事なし。

19 然れば兄弟等よ、我等はイエズスの御血により、

20 イエズスの己が肉なる幔を経て我等に開き給ひし、新にして活ける道より聖所に入るべき事を確信し、

21 且神の家を司る大司祭を有する者なれば、

22 心を惡き料簡より濯がれ、身を清き水に洗はれて、眞心と完全なる信仰とを以て之に近づき奉り、

23 確乎として我等が希望の宣言を保つべし、約し給ひし者は眞實にて在せばなり。

24 又互に顧みて親愛と善業とを相励まし、

25 或人々の為馴れたるが如くに集を缺く事なく、寧相勧めて、日の近づくを見るに随ひて愈励むべきなり。

26 蓋我等既に眞理の知識を受けたる後、故に罪を犯さば、殘る所は最早罪を贖ふ犠牲に非ずして、

27 唯懼る懼る審判を待つ事と、敵對する者を焼盡すべき火の烈しさとのみ。

28 モイゼの律法を破りたる人すら、二三人の證言によりて容赦なく死するなれば、

29 况て神の御子を蹂躪け、己が由りて以て聖と為られし約の血を蔑視し、恩寵を賜ふ聖霊に侮辱を加へたる人の受くべき刑罰の厳しさの、如何許なるかを思へ。

30 「復讐は我事なり、我報ゆべし」と曰ひ、又「主は其民を審判すべし」と曰ひし者の誰なるかは我等の知れる所なり。

31 恐るべき哉、活き給へる神の御手に罹る事。

32 汝等曩に照らされつつ、苦の大いなる戰を忍びたりし日を追想せよ。

33 即ち或は侮辱と患難とを以て人の観物と為られ、或は斯る事に遇へる人々の侶と成りたりき。

34 蓋囚人の上をも思遣り、又己が立勝りたる永存の寳を有せるを知りて、我財産を奪はるるをも喜びて忍びたるなり。

35 然れば大いなる報を得べき汝等の希望を失ふ勿れ。

36 即ち神の御旨を行ひて約束のものを得ん為に、汝等に必要なるは忍耐なり。

37 蓋來らんとする者は軈て來り給ふべく、延引し給ふ事あらじ。

38 我義人は信仰によりて活く、若自ら退かば我心に適はざるべし。

39 我等は亡に至らんとして退く者に非ず、魂を得んとして信仰する者なり。

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