Lucas 6

Japanese Raguet-yaku ラゲ訳「我主イエズスキリストの新約聖書」(1910年版) (JAPRAGUET)

1 過越祭の二日目の後、初の安息日に、イエズス麦畑を過り給ふ時、弟子等穂を摘み、手に揉みて食しければ、

2 ファリザイの或人々彼等に云ひけるは、何ぞ安息日に為すべからざる事を為せるや。

3 イエズス答へて曰ひけるは、ダヴィドが己及伴へる人々の飢ゑし時為しし事を、汝等読まざりしか。

4 即彼神の家に入り、司祭等の外は食すべからざる供の麪を取りて食し、伴へる人々にも與へしなり、と。

5 又彼等に曰ひけるは、人の子は亦安息日の主たるなり、と。

6 又他の安息日に當り、イエズス會堂に入りて教へ給へるに、右の手萎えたる人其處に居りければ、

7 律法學士、ファリザイ人等、イエズスを訟ふる廉を見出さん為に、彼安息日に醫すやと窺ひ居りしが、

8 イエズス其心を知りて、手萎えたる人に、起きて眞中に立て、と曰ひければ、彼起きて立てり。

9 イエズス彼等に向ひ、我汝等に問はん、安息日に許さるるは善を為す事か、惡を為す事か、生命を救ふ事か、之を亡ぼす事か、と曰ひて、

10 一同を見廻らし給ひ、彼人に、手を伸べよ、と曰ひしかば、彼伸べて其手痊えたり。

11 然るに彼等が愚を極めたるや、如何にしてイエズスを處分せんかと語合ひ居たり。

12 其頃イエズス祈らんとて山に登り、終夜祈祷し居給ひしが、

13 天明に至りて弟子等を招び、其中より十二人を選みて、更に之を使徒と名け給へり。

14 即ちペトロと名け給へるシモンと其兄弟アンデレア、ヤコボとヨハネ、フィリッポとバルトロメオ、

15 マテオとトマ、アルフェオの子ヤコボとゼロテと云へるシモン、

16 ヤコボの兄弟ユダと謀叛人となりしイスカリオテのユダとなり。

17 イエズス、是等と共に下りて平かなる處に立ち給ひしが、弟子の一群と共に又夥しき群衆あり。是イエズスに聴き且病を醫されんとて、ユデアの全地方、エルザレム及びチロとシドンとの湖辺より來れるものなり。

18 斯て汚鬼に悩まさるる人々醫され、

19 群衆皆イエズスに触れんと力め居たり、其は霊能彼の身より出でて、凡ての人を醫せばなり。

20 イエズス弟子等の方に目を翹げて曰ひけるは、福なる哉汝等貧しき人、其は神の國は汝等の有なればなり。

21 福なる哉汝等今飢うる人、其は飽かさるべければなり。福なる哉汝等今泣く人、其は笑ふべければなり。

22 福なる哉汝等、人の子の為に憎まれ、遠ざけられ、罵られ、其名は惡しとして排斥せらるる時、

23 其日には歓び躍れ、其は汝等の報天に於て大いなればなり。即ち彼等の先祖は預言者等に斯く為したりき。

24 然れども、汝等富める人は禍なる哉、其は今己が慰を有すればなり。

25 汝等飽足れる人は禍なる哉、其は飢うべければなり。汝等今笑ふ人は禍なる哉、其は嘆き且泣くべければなり。

26 汝等人々に祝せらるる時は禍なる哉、即ち彼等の先祖は僞預言者等に斯く為したりき。

27 然れば我、聴聞する汝等に告ぐ、汝等の敵を愛し、汝等を憎む人を恵み、

28 汝等を詛ふ人を祝し、汝等を讒する人の為に祈れ、

29 人汝の頬を打たば、是に他の頬をも向けよ。又汝の上衣を奪ふ人には、下衣をも拒むこと勿れ。

30 総て汝に求むる人に與へよ、又汝の物を奪ふ人より取戻すこと勿れ。

31 汝等が人に為られんと欲する所を、汝等も其儘人に行へ、

32 己を愛する人を愛すればとて、汝等に何の酬かあらん、蓋罪人も猶己を愛する人を愛するなり。

33 又汝等に恵む人を恵めばとて、汝等に何の酬かあらん、蓋罪人も猶之を為すなり。

34 又受くる所あらんことを期して人に貸せばとて、汝等に何の酬かあらん、蓋罪人も猶均しき物を受けんとて、罪人に貸すなり。

35 然れど汝等は己が敵を愛し、又報を望まずして貸し、且恵め、然らば汝等の報大いにして、最高き者の子たるべし、其は恩を知らざる者、惡き者の上にも仁慈に在せばなり。

36 然れば汝等も亦慈悲あること、汝等の父の慈悲に在す如くなれ。

37 人を是非すること勿れ、然らば汝等も是非せられじ。人を罪すること勿れ、然らば汝等も罪せられじ。宥せ、然らば汝等も宥されん。

38 與へよ、然らば汝等も與へられん。即ち量を善くし、壓入れ、揺入れ、溢るる迄にして、汝等の懐に入れられん。其は己が量りたる所の量にて、己も亦量らるべければなり。

39 然てイエズス喩を彼等に語り給ひけるは、瞽者は瞽者を導き得るか、二人ながら坑に陥るに非ずや。

40 弟子は師に優らず、誰にもあれ、己が師の如くならば完全なるべし。

41 汝何ぞ兄弟の目に塵を見詰めて、己が目に在る梁を省みざる、

42 又己が目の梁を見ずして、争でか兄弟に向ひて、兄弟よ、我をして汝の目より塵を除かしめよ、と言ふを得んや。僞善者よ、先己が目より梁を除け、然らば目明にして、兄弟の目より塵を除くを得べし。

43 惡き果を結ぶは善き樹に非ず、又善き果を結ぶは惡き樹に非ず、

44 即ち樹は各其果によりて知らる。茨より無花果を採らず、藪覆盆子より葡萄を取らざるなり。

45 善き人は其心の善き庫より善き物を出し、惡き人は惡き庫より惡き物を出す。口に語るは心に溢れたる所より出づればなり。

46 汝等、主よ主よ、と呼びつつ、我が言ふ事を行はざるは何ぞや。

47 総て我に來りて、我言を聞き且行ふ人の誰に似たるかを汝等に示さん。

48 即ち彼は家を建つるに地を深く掘りて基礎を岩の上に据ゑたる人の如し。洪水起りて激流其家を衝けども、之を動かす能はず、其は岩の上に基したればなり。

49 然れど聞きて行はざる人は、基礎なくして土の上に家を建てたる人の如し、激流之を衝けば、直に倒れて其家の壊甚し、と。

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